「悲しい」「美しい」「腹が立つ」など、形容調的なものを乱発せず、客観的に書くことで思いを表現した文章が、力のある文章です。
また、表現のコツとして、対句を用いるのも伝統的な手法です。
長年、短い文章にまとめていた立場上、私も好んで使います。
例えば「梅にうぐいす、柳に蛙」などが代表的な対句です。
他にも、中国の古い詩で「年々歳々花相似たり、歳々年々人同じからず」という文句があります。
S栄作首相が沖縄問題について語った「沖縄が返ってこない限り、日本の戦後はない」も対句的な表現です。
私は「神は有森裕子をつくり、有森裕子は自分をつくった」と書いたことがあります。
対句的な言い方です。
自分で考えたのではなく、「ユリシーズ』という小説を読んでいたら、注に「神は田園をつくり給い、人間は音楽をつくった」とあったかんこつだいたいで、換骨奪胎したものです。
かんこつだいたいこの言葉を換骨奪胎したのは二度ではありません。
友人が毎年暮れに贈ってくれるきんぴらゴボウで一杯飲むのが暮れから正月の習慣なので、「神はゴボウ、ニンジン、人間はきんぴらゴボウをつくった」と書いたことがあります。
対句的な文章を書くときには、独断的に書くのがコツです。
迷いがあるとだめにしてしまいます。
長くても3行ぐらいまでで、ワッと言い切って書くと、遊びとして非常におもしろくなります。
文章を書く作業は、自分の内面で対話することからはじまり、「なぜ」を繰り返しながら進んでいきます。
まず、「さあどう書こうか」と自分に問いかけ、「こういうふうに書こう」と答える。
書き進んでいくと、表現について自分と対話していきます。
定義をしてからその後に展開するときも、「自分はなぜそう考えたのだろう」と自問していきます。
そのうち最初に気がつかなかった考えが浮かんでくる可能性もあります。
書いているうちに、はじめに書いた結論のようなものに修正が加えられることもあるでしょう。
「考えたことを書くのが文章」と言う人もいますが、頭のなかで考えていることと、表現されたものは別のものです。
考えの通りに書いていくと、考えが変わっていく現象が起きます。
多くの人が、書いているうちに連想や発想が次々に広がる経験を持っているのではないでしょうか。
書くことは、自分との対話です。
自分が気づいていなかったことを発見する小さな旅と言い換えられます。
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